宇多丸 まずMitsuのビートがあって……「この曲は誰でも好きだろ! これはみんなぜったいに好きなはず!」っていうトラックで。Mitsuも自信作だって言ってたし、ぜひなんかで使おうよってなってさ。で、どうしようかってなって、最初に“フラッシュバック、夏。”っていうタイトルを思いついたんだよ。タイトル先行です、これ。ちょっと80's感もあったりして。
―― 80年代の化粧品のCM的な?
宇多丸 そうです! 完全にそれです! で、それをDに伝えたらサビを思いついたって言ってきて、みたいな。
―― じゃあかなりとんとん拍子でできていった?
Mummy-D うん、とんとんとんと行ったほうでしょ。
宇多丸 で、1stヴァースと2ndヴァースが入って、オチにこういうアイデアがあるってことで3rdヴァースを入れて。
―― もしかしたらジャケットもそういう80's感を踏まえたものなの?
宇多丸 そうですよ、そりゃあ。あの書体とかも……そうですよ!
―― なるほど。ただ、もう1年ぐらい前にはできていた曲ということだけど、『POP LIFE』収録曲とはリリックの書き方のスタンスがちょっとちがうかなって気がして。結構自由に書いてる感じがするっていうかさ、「レミニス」とか「長い長い長い〜」とか、『POP LIFE』に入る曲だったら言わなそうな気がするんだよね。
宇多丸 あ、そうかもね……そうかもそうかも。
Mummy-D (素っ気なく)ふーん、そうですか。
―― なにその感じ(笑)。
Mummy-D ハハハハハ。
宇多丸 でも言われてみればそうかも。もうちょっとこっちのほうが良い意味で気楽につくってるというかね。ちょっと若い感じ? 若書きな感じをちょっと入れてみましたって感じなんだよね。
―― 若書き?
宇多丸 なんていうのかな……“ONCE AGAIN”みたいにガチッと構成ができてる感じというよりは、調子にのって書いてる感じ。特に前半のほうはね。
―― なんか……ふだんから言ってるようなことをまとめた感じだね。
宇多丸 僕の夏論ですよ。
―― じゃあ曲のコンセプトは宇多丸さんが牽引していった感じ?
Mummy-D これは完全にそうだよ。
―― トラックの気持ち良さ優先でのせたラップでもあるのかなって。
Mummy-D そうだね。トラック気持ちいいけど、ちょっと切ないコードとか入ってるから、まさにそのバランスってことなんだろうね。
DJ JIN ブラジリアン・テイストですよ。
―― サウダージだ。
Mummy-D でもホント、この曲はサマー・ソングとして新しい書き方ができたんじゃないかな。
宇多丸 画期的だと思ってるけどね。
Mummy-D イヤじゃない……そのサマー・ソングイヤじゃない! 俺らなりのサマー・ソングっていうか、いいのできたなーって。
宇多丸 ぶっちゃけ、3rdヴァースで死の香りのすることを言ってるじゃないですか。要は、3rdヴァースでの「夏」は人生全体のメタファーにもなってるってことなんですよ。でね、このご時世にそんな不吉なニュアンスが入ってくるのはどうなんだって思ったりもしたんだけど、いやそれでいいんだって。というのも、「死を意識して生きるしかないんだ」ってことを、みんなが認識せざるを得なくなったわけでしょ。だからこその、いわゆる「メメントモリ」的な仕掛けというかさ。
死を意識することでよりよい生が輝くんだっていうね。そういう視点はいまぜったい有効なんだって判断して入れてみました。
―― でも1年前につくった時点ですでにあったフレーズなんだよね?
宇多丸 うん、あらかじめ入ってたものなんだけどね。
―― むしろあったほうがいいっていう。震災関係なくね。
宇多丸 そういうことだと俺は思ってますね。
Mummy-D ブラック・アイド・ピーズの、ディック・デイルの“Misirlou”をサンプリングした“Pump It”がヒットしたころちょうどマボロシやってて。こういう曲もおもしろいなーって思ってさ。で、「こういうのやってみようよ」って竹内朋康に相談したらNG食らってさ(笑)。俺のスタイルじゃないって。
―― まあ、たしかにね。
Mummy-D そのアイデアを寝かしておいたというか、ああいうのおもしろいなーって。で、そのあとにメジャー・レイザーの“Hold the Line”を聴いて……ヴェンチャーズとダンスホール・レゲエが一緒になった感じ? なんかいいなーって思ってさ。で、こういうのって多分小野瀬さん(小野瀬雅生)にやらせたらいちばん上手いだろうなーって。CRAZY KEN BANDはサーフ・ロック調の曲とかたくさんやってるからさ。それである日、車のなかでiPodをシャッフルにして聴いてたらCKBの“俺たち海坊主”ってギター・インストの曲が流れてきて。「まさしくこれだ!」って感じになってね。ぜったい頼みたいって。
―― ブラック・アイド・ピーズの“Pump It”も結構力技なところがあるし、サーフ・ロックをヒップホップに落とし込むのはたいへんだったんじゃない?
Mummy-D いや、そこはもうマボロシでいろんなことをやってるからさ。ギターとヒップホップ・ビートのからみってことではぜんぜん困らなかった。小野瀬さんが俺の意図を完全に理解してくれたのがでかいっていうか。「あの『パルプ・フィクション』みたいな感じで!」って言ったんだよね(笑)。雑に言ったほうがいいだろうと思って。「『パルプ・フィクション』みたいな感じで、基本的にマイナーなんだけど、フックだけ急にパーッと開けたメジャー・コードな感じ」って。「あとはもう“俺たち海坊主”です」って言ったら「はいはい、わかりました」って。一発。
―― でもやっぱこういうのは小野瀬さんって感じだよね。
Mummy-D あとは寺内タケシさんぐらいしか考えられない(笑)。ちょうどのっさんが寺内タケシさんにハマってる時期だったらしいんだよね。
―― 歌詞ははっちゃけたパーティー・ソング的な側面もあるんだけど、こういうご時世のなかでサマー・アルバムをつくったことの表明にもなってる。
Mummy-D 最初は海辺のチャラチャラしたナンパな曲にしたかったんだけど、震災直後に最初に書いた歌詞だからさ。それしか出てこなかったって感じだね、逆に。
―― いつぐらいのタイミングでつくったの?
Mummy-D ギターをもらって、構成つくっていったのが3月17日だから、歌詞を書いたのは3月末ぐらいかな……なにを考えてたんだろ、あのころ。まだ余震とかバリバリあったしさ。水もないとか、スーパーに行っても物資がまともになかった時期……いちばん緊迫していたころに書いた歌詞だからね。あの当時は計画停電もずっと継続していきそうな雰囲気だったじゃん? だからそういう歌詞になったんだけど、もしかして夏になったらヤボになってるかなーみたいなことも考えたんだけどね。それでいてさ、今年の夏の歌にしたいけど、来年以降機能しなくなる歌にもしたくないし……いろいろ考えた結果っす。
―― 最初のヴァースでこれだけ言ってれば、次のヴァースが「暑い!ヤバい!間違いない!」で始まってもぜんぜんだいじょうぶっていうか(笑)。
Mummy-D そうだね、最初にそれだとね(笑)。でも俺好きなんだよね、あの瞬間が。宇多さんのああいう側面がきたことによって、ね。
宇多丸 ここからは騒いでいいんですよー、みたいなね。でも実はそこも最初は悩んでいて、最初はもっと堅苦しい歌詞で。だから、もう「暑い!ヤバい!間違いない!」ぐらい言わないと服脱げないなって(笑)。いちばんダメな感じでいかないとね。
―― いいバランスの曲になったね。
Mummy-D まあ、結果ね。なんか「サマー・メッセージ・ソング」っていう変なジャンルになったね。
宇多丸 ホントだね。
―― うん、だからこの歌詞の内容で“サマー・アンセム”なんてタイトルがついてると、また別の意味が生まれてくるというか。
Mummy-D うん、そうだよ。どっちかというと「今年の夏は応援しないとまずいぞ!」って感じだからさ。夏を応援するって感じだよ、どちらかというと。で、最後のほうにはエディットとかバシバシやって、小野瀬さんのギターもぶち壊しまくって(笑)。それによっていまっぽさというか、さらに攻撃的な感じが増したから、気に入ったバランスになったって思ってる。
DJ JIN リスナーの人生を彩れるような曲をつくれたらいいな、とは考えてた。その人の人生に染みる曲。それを表現するためにオケ自体は地味というかダークなんだけど、でもそこに輝いてる成分を入れたり、ソウルやジャズのフレイヴァーも入れて温かい仕上がりにしてみた感じかな。
―― あまりに世界観ががっちりできあがっていて、もともと“Magic Hour”って曲をつくろうってところから出発したんじゃないかって思えてくる……。
DJ JIN 最初にもやもやしたイメージがあって、そのもやもやを少しずつかたちにしていく感じでオケをつくって、それでみんなで打ち合わせをして。そうしたら宇多さんから“Magic Hour”ってタイトルが出てきて。そのへんから進めていったって感じかな。
―― じゃああらかじめつくっていたビートがあって、それを“Magic Hour”っていうコンセプトが出たことによってそっち方向にブラッシュアップしていったって感じ?
DJ JIN そう。ただ、サビを歌にしたいっていうアイデアだけは最初からあって。ジャズやソウルのファジーなコードが循環していくような曲だから、そこで歌ってもらうにはソウルのオーガニックな感じや伝統的な感じもわかってるけど、ちゃんと時代感のあることもやってくれる人となると、やっぱり(さかい)ゆうしかいないかなと。
―― JINくんらしいソウルやジャズのフレイヴァーもありながら、ちゃんと日本の夏の黄昏時にフィットするムードも併せ持ってるというかね。
DJ JIN 夕方とかに車でも乗りながら聴いたら、その人の人生を彩れる……そういう曲をつくりたかった。
Mummy-D これはもう完全に絵が浮かぶもんね。このビートはもう夕方しかありえない。夕方っていうのはもう決まってたから、そこから“Magic Hour”ってとこに話が進んだんだと思うんだけど。あとね、キック(バスドラム)に稲妻みたいな音が最初から混じってたんだよ。フィルターかけてるんだっけ? それがいいねーって言ってて。で、夕方で遠くで雷が鳴ってたら完全に絵が見えるじゃん?
海で、夏の始まりだか終わりだかわからないけど、ちょっと台風が近づいてるぞ、みたいな。
DJ JIN シネマティック感のあるものをつくりたかったっていうのもあったけどね。
宇多丸 もともとあるヴィジョンを言葉にしたってだけで。
―― なるほど。
DJ JIN あとこの曲はですね……フフフ。レコーディングがいろいろと終わって、家でエディット作業をするんだけど……どこをどうしようとか、なにを足してなにを引こうとか。で……初めて……泣きました……泣きに泣いた(笑)。
Mummy-D きたー!
宇多丸 アホだ……泣きに泣いた……!
DJ JIN 俺が染みちゃったよ!
宇多丸 そんな曲かあ? 泣きに泣くって!
DJ JIN なんかぐっときちゃって(笑)。
―― それは震災以降の思いが託されて、みたいなところもあるから?
DJ JIN そうねぇ……あと2人目の子供も産まれて……。
宇多丸 そっちなんじゃねぇの?
DJ JIN 感受性が……エモがぐわーっと……家で、ひとりで作業部屋でですよ。だから、泣いても恥ずかしくない状況で。
宇多丸 そういうときはエモが行きやすいよね。
―― そういう経験はいままでなかったんだ?
DJ JIN ないねぇ。
宇多丸 精神的に不安定なだけだろ(笑)。
DJ JIN いや、でも染みたんですよ……歌詞もそうだし。だから俺にとって思い出の1曲になったね。
Mummy-D だってジンが気に入るような歌詞を考えたんだもん。嫁さんも子供も仙台にいる独り身だったじゃん? だからオチ的にはちょっとファミリーっぽさを出してみたんだけどね。あのコとのアバンチュール、みたいなのじゃなくてさ。
DJ JIN 完全に刺さりました!
Mummy-D ジンに刺されば間違いないからね。
―― 宇多丸さんは宇多丸さんで……これはもろに宇多丸さんの夏だよね。
宇多丸 失礼だな、あんた……Dがすごくキレイな歌詞だから、こっちは不発感で。夏って基本的には不発じゃん? でも、その不発なのがいいんじゃん!っていうさ。あと、ちょっとエッセイっぽくしてみたっていうのはあるね。短いエッセイを読んだような感じ。
DJ JIN そのハードボイルドなところがまたぐさっと刺さったりして。
Mummy-D (“フラッシュバック、夏。”に続いて)またギャグがすべってんのかよ(笑)。
宇多丸 いや、同じ奴なんだよ。俺のなかでは“フラッシュバック、夏。”に出てくるあいつらなんだよね。登場人物がぜんぶ一貫してると思って聴いてもらってもいいアルバムです、これ。そうすると結構笑えると思うんだよ。
宇多丸 俺はプロデュースのノウハウはないし、どっちにしても誰かと組まなきゃいけないわけで。なので、ひとり1曲プロデュースみたいな企画が出た段階ですぐに「じゃあ俺は矢野さんと」って言ってたんだよね。矢野さんはもともとCymbalsのメンバーで、NONA REEVESとか南波志帆さんとかを手掛けてるんだけど、とにかく俺は矢野さんがつくるサウンドが大好きでさ。前にMIHIROの“これは恋ではない”の制作に携わったときも矢野さんにお願いしたし。あのときは今回ほど緊密ではないんだけどね。だから、もうちょっとがっぷり四つに組んでやりたいなっていうのももともとあり。で、好きなことやっていいっていうから矢野さんと組んで80'sっぽいやつって。
―― ちょっとアレクサンダー・オニールとかS.O.S.バンドとかが所属していたタブー・レーベルの音を思わせるところがあるかな。
宇多丸 で、矢野さんとミーティングしたときに俺がやりたい感じの参考曲を聴いてもらってさ。この曲のこのシンセの感じとか、この曲のこのビートの感じとか、この曲のカフェバー感とか……そうやってイメージ伝えて。
―― ちなみにどんなアーティストや曲を聴いてもらったの?
宇多丸 スクリッティ・ポリッティとかS.O.S.バンドとか、チャカポコしたニューウェイヴっぽいパーカッションを入れたいってことでトーキング・ヘッズとか。あとはグレース・ジョーンズとかね。
―― MIHIROさんとやったときよりは緊密に作業にしたって言ってたけど、どういうふうに進めていくものなの?
宇多丸 最初にデモ・トラックがあがってきて、それに対してもっとシンセ・ベースをこういうふうにしてください、とか。あとさ、俺は本当に素人だからメールの文面で「ここにマドンナの“Holiday”のチャチャチャチャーラチャラチャーラみたいなの入れてください」とか書いてたんだよね。「擬音でわかりますか?」みたいな。矢野さんはそこがツーカーなのが話が早くてさ。いやー、でもプロデュースはむずかしいね。いやだね、プロデュースは(笑)。
Mummy-D こういう立場のプロデューサーじゃないとつくれない音ってあるからね。自分で音をいじりだしちゃうと見えなくなることがいっぱいあるから。俺はもっと宇多さんやるべきだと思うけどね。
宇多丸 もちろん楽しいは楽しかったんだけどね。
―― 歌詞は……このアルバムでいちばん共感できたかも。
宇多丸 どういう歌詞にしようか相談してるときに、準備してるときがいちばん楽しいわけじゃん、と。遠きにありて思うもの説ですよ……その場にいるときは実はそんなによくないんだよ。あくまで過ぎ去ってるか、これからか、だよね。昔からさ、夜出掛けるときのワクワク感に勝るものはないじゃないですか。その感じだよね、十代のときにこんな曲を聴きたかった、みたいな。
―― もうねぇ、最初のラインからダメ……「再集合」ってフレーズに弱い……。
宇多丸 よくぞわかってくれました! これは前からあちこちで披露してる自説なんだけど、ハシゴをしてるときがいちばん幸せなんだよ! この世でいちばん幸せな瞬間なんだよ! だから、日焼けオイルを洗い流してまた集まろうっていう最初の1行ができて「ようやく見えた!」て感じ。そこが出るまですごい時間がかかったんだけど。
―― あとはこのラインが好き……「遅刻しそう タクシー移動しよう あー すでに超たのしー! ど、どうしよう」。
宇多丸 そう、ただそれ以上楽しくはならないぞっていう。
Mummy-D そうなんだよねぇ。
宇多丸 Dがまさに書いてるけど、集合場所に着いたらすでにもうなにか計画の崩れが生じている勢いなんだけどね。
―― Dくんのヴァースもまるごといいね。
Mummy-D クラブに行ったときの情景を歌わないで、それで夏の昼のことも感じさせて、夜も直接的には歌わないんだけど、そのジョイント部分だけを歌うみたいなのっていいなーって。
―― 「キミは今頃青空の下 肌さらして 羽伸ばして チャラい輩と仲良くBBQってか」とかね……すごいわかる!
Mummy-D なんか乗り遅れたときあるじゃん?
宇多丸 夏の一日の乗り遅れは痛いからね……気がついたら暗かったときの死にたい感はあるよね。十代のころのほうが夏の思い出づくりにがっついてるじゃん? 「うわー、貴重な十代の夏の一日を寝てすごしてしまったー!」みたいなさ(笑)。
Mummy-D でもさ、挽回のチャンスがあるんだよ、再集合だから。そこに気合い入れていったら、あのコは来るのか来ないのか、みたいな。
―― あるよねぇ……謎のコーデとかもたまんないよねぇ。
宇多丸 俺のなかのストーリーでいくと……昼のノリで再集合しようぜって集まるんだけど、実際は「あいつ来ないってー」とか、どんどんどっちらけなことが起こってさ。結局集まったのが比較的冴えない組み合わせになっちゃって……で、ポイントはここから“ザ・サウナ”につながるところなんだよね(笑)。こいつら結局男3人ぐらいでサウナ行ったんじゃねぇかっていう……「女なんていらねぇんだよな、こういうのいいんだよな!」とか言ってさ(笑)。
Mummy-D でも、ガックリなオチをつけなかったのが最近の俺らの歌詞力が上がってるところだよね。
宇多丸 本気でワクワクすると思うんだよね。
―― ワクワクするよね……「いっそよーいドンで走り出したいぐらい」とか超笑える。
Mummy-D ダサいよねー、こいつ(笑)。
宇多丸 ちなみにタイトルはジョン・ランディス監督の映画『眠れぬ夜のために』の原題で、タイトルがぜんぶ小文字なのはそれのアートワークに倣ったんだよね。もちろんマイケル・フォーチュナティの“Into the Night”もかけてはあるだけど。
宇多丸 もう何年も前から“ザ・サウナ”って曲をつくったらいいよねってゲラゲラ笑って話してたんだよ。サビも「サウナの掟に逆らうな」って決まってて。
DJ JIN (古いノートを見ながら)サビは「ザ・サウナ ザ・ガマン Cause I'm the Man」っていう案もあったね。
宇多丸 あー、それもあったなー。
―― いつぐらいなんだろう?
DJ JIN 『HEAT ISLAND』のころかな?
―― あー、『HEAT ISLAND』のトーンに合う曲かもしれないね。
Mummy-D 合うね、入ってそうだよね。『HEAT ISLAND』っぽい。
宇多丸 もう定番ギャグみたいになってたんだよ、“ザ・サウナ”が。それこそ『マニフェスト』や『POP LIFE』つくってるときも言ってたし。
―― で、ここがやりどきだと。
Mummy-D そうだね。
宇多丸 でも問題はサマーじゃないっていう。
―― 汗とか暑いってだけだ(笑)。
DJ JIN 夏に食うおでん的なね。
宇多丸 最初は直接的にサウナじゃなくて「サウナ状態」でいいじゃんって言ってたんだけどね。どっかのタイミングで「状態」がとれた(笑)。
Mummy-D どっちかだって話してたんだよね。
DJ JIN サウナそのもの!
宇多丸 サウナそのものをがっつり歌うのもいいかなって。GAS BOYSの“公衆便所”が公衆便所そのものを歌ってるような感じで(笑)。
―― トラックはこれ用に新たにつくったもの?
Mummy-D そうだよ。まず、タイトルやサビの感じからしてたぶん遅いビートだろうなって。それで、暑苦しいギターがガーンとくる、みたいな。そういう完成図がありすぎて、逆につくるのむずかしくてさ。この完成版でトラック5個目なんだよ。最初はレッド・ツェッペリンの“When the Levee Breaks”みたいな感じだろうなーと思ってループしてたんだけど……なんかさ、サウナは暑いだけじゃなくてそこにガマン感も入らないとダメなの! ずっと暑いとダメってことに気がついてさ。
宇多丸 これはつくってみないとなー(笑)。
Mummy-D 常に開放してるわけじゃないじゃん。常にガマンしてガマンして……そこがすごくむずかしくてさ。
―― ガマン感を出すにはどういう苦労があった?
Mummy-D ヴァースでガマンを表現して、サビで逆ギレするっていう。
―― そのサビがまた意味がわからなすぎて……。
Mummy-D アレでしょ? 「サウナの記憶」でしょ? なんだよ「サウナの記憶」って(笑)。
宇多丸 DNAに刻み込まれたサウナの記憶だよ(笑)。ちなみに、このサビをつくるときは事前にD.O.C.の“The D.O.C. & The Doctor”を聴いて参考にしたんだよね。あとは「For Men感」。とりあえずはっきりしてるのは、ホモっぽく書けば間違いないっていう(笑)。それさえ押さえればぜったいブレないっていうね。
―― 一緒にサウナに入ってる人との連帯感というかホモソーシャル感? 「お先にどうぞ そちらこそどうぞ」とか。
Mummy-D 牽制しつつもね。
DJ JIN ライバルであり同士!
―― 「互いの安否気遣い」とか(笑)。
Mummy-D そんな危ねぇのかよ(笑)。
DJ JIN ガマンしすぎちゃうと死人が出ちゃうからね。
―― ジンくんはひさしぶりのラップだけど。
Mummy-D これはジンはぜったいに入れるしかないってことになって。
DJ JIN どれだけ振り切れるかが勝負だったからね。いちばん最後だし。
―― 「本場北欧男児」ってフレーズもすごいし。
Mummy-D そんな単語ねぇよ(笑)。
DJ JIN 「For Men感」のある言葉をどれだけ放り出せるかってところだからね。
宇多丸 あとは「優しさ」だよね。「優しさ」は出てこないでしょ。
Mummy-D 「優しさ」が入ったのはいいよね。本物はちがうな。
DJ JIN 男臭感をどう奥ゆかしくいやらしく表現していくか……それを考えていったらやっぱり「優しさ」かなって。
Mummy-D 本物からすると俺とか宇多さんはまだまだだね。
宇多丸 厳しさを歌っちゃってるからね。
―― いいメンツですね、リミックス。
宇多丸 TAKUは前からよく名前出てたんだんけどね。
―― あ、『マニフェスト』のプロデューサー候補のひとりとして名前があがってたんだっけ?
Mummy-D クラブ系のメンツを集めてやろうかっていう別の案があったときね。
―― やっぱいいよね。オリジナルの良さを尊重したリミックスで。
Mummy-D いいですねー。
―― あとはPMXさん。ライムスターとしては1993年の『俺に言わせりゃ』以来18年ぶりのコラボだね。
宇多丸 パブさんも前からなんかやりたいねって言ってたんだよ。ウェッサイな感じで。
DJ JIN カリ!
宇多丸 サビとか女の子のヴォーカルが入ってくるぐらいの反則があってもいいよね、なんて話してたら本当に入れてきたからね。