RHYMESTER

Open The Window ALBUMS 2023.06.21 Release




アルバム『Open The Window』について
(CD初回盤同梱・文庫本:宇多丸による序文より)

 これまで開けたことのなかった「窓」を、ひとつひとつ、新鮮な苦悩と喜びを味わいながら、丹念に開けていった作品集です。
 まだ手をつけていなかったジャンルや手法、組む機会がなかった方々、かつては想定していなかったリスナー層まで……そのすべてを同時もしくは短時間にクリアするのは不可能でしたから、やはりこれは、この五年間、このやり方でしか作れない「アルバム」だったのだと思います。
 振り返れば近年、良い方向にも悪い方向にも、世界はまた大きく動きました。その中で、ともすれば安易な絶望や野蛮に陥りがちでもある人類を、それでも少しずつ前進させてきた最大の原動力は、一挙に全ての答えを出そうとする性急さではなく、一個一個地道に物事の風通しを良くしようと試みる、まさに「窓を開けてゆく」営みの数々だった、と言えるのではないでしょうか。この間の我々にも、そんな気分は共有されていたはずです。
 ともあれ「窓」の先に開けていた、色とりどりの新たな景色を、ご堪能いただければ幸いです。

RHYMESTER


その1曲1曲が新しい窓を開けるために、必要不可欠なチャレンジだった
2023年に響き渡るべき、RHYMESTERのニューアルバム


RHYMESTERが前作『ダンサブル』から実に6年ぶりとなるニューアルバム『Open The Window』を完成させた。しかし、“6年ぶり”と書くと、なんだか違和感を覚える。それほどまでに本作『Open The Window』を構築するうえで強靭な骨組みとなっている既発シングルの1曲1曲が、音楽的な挑戦という意味においても、耳目を惹くトピックにおいても大きな存在感を誇っている。

岡村靖幸との「マクガフィン」やスチャダラパーとの「Forever Young」など記念碑的なコラボレーションがこのフェイズで実現し、「After 6」、「初恋の悪魔 Dance With The Devil/SOIL&"PIMP"SESSIONS に RHYMESTERを添えて」、「世界!西原商会の世界 Part2 逆 featuring CRAZY KEN BAND」、「2000なんちゃら宇宙の旅」といった実に多種多様なタイアップ楽曲が数多く発表されていったのも印象的だ。

音楽像においても「マクガフィン」と「Forever Young (ザキヤマ Remix)」はどこまでもドープな音像と緻密なサウンドプロダクションが施され、市井の夜をアーバンディスコで照らす「After 6」、SOIL&"PIMP"SESSIONSによる妖しく躍動するジャズアンサンブルと濃密に交わりながら謎だらけの恋の駆け引きがシネマティックに繰り広げられる「初恋の悪魔 –Dance With The Devil-」、労働と社会貢献をエンターテイメントに昇華する最高峰のノベルティーソングと呼びたくなる「世界!西原商会の世界 Part2 逆featuring CRAZY KEN BAND」、スペイシーなジャズフュージョン感に富んだトラックを基軸にしつつサイドキックに子どもたちの声をフィーチャーするなど、クラスタの差異を問わないフレッシュなポップミュージックを形象化してみせた「2000なんちゃら宇宙の旅」と、コラボレーションやタイアップに課されたお題を“こうきたか!”とこちらが膝を打つ流石の手つきでクリアしている。あまつさえ、どこを取っても比肩なきラップグループとしての生き様をも投影しながら、まさに1曲1曲で新しい窓を開けていき、絶対にRHYMESTERにしか提示できない真新しいドープネスやポピュラリティを獲得していった。

それらに連なるアルバム曲がまた、強力だ。三者三様のフィーチャリングアーティストとともに2023年6月にリリースするアルバムだからこそ鳴らし、ラップし、歌えることを『Open The Window』のために書き下ろしている。それが、このノイズにまみれた日常を誰しもがスーパースターとして闊歩するためにエンパワーメントする「My Runway feat. Rei」であり、オールドスクールなヒップホップビートにシルクソニックなどを彷彿させるメロウ&ソウルフルなメロディやノイジーな音像を掛け合わせ、誰一人として搾取されない未来を想像する表題曲の「Open The Window feat. JQ from Nulbarich」であり、方や1989年に結成され、方や1989年にこの世に生まれた“ラップグループの矜持と軌跡”をボースティングする「なめんなよ1989 feat. hy4_4yh」である。
そして、2019年1月2日にリリースした、すでにRHYMESTER=KING OF STAGEの新たなアンセムとしての貫禄を湛えている「待ってろ今から本気出す」でアルバムは幕を閉じる。

RHYMESTERにとって、その1曲1曲が新しい窓を開けるために必要不可欠なチャンレジだった。2020年でも、2021年でも、2022年でもない。これぞ、2023年に響き渡るべきRHYMESTERのニューアルバム。

パンデミックやロシアのウクライナ侵攻によってこれまで以上に世界全体の情勢が混乱し、経済が揺さぶられ、閉塞感に覆われたこの時代にあって、RHYMESTERの『Open The Window』は指し示す。それでも確実に刷新された思考の形や概念の色が、彼らの音楽表現の可能性を拡張したということを。

さぁ、窓を開けよう。新しい世界を見るために。
RHYMESTERの真新しいドープネスやポピュラリティに満ちた『Open The Window』の聴き応えは、刺激的で、楽しく、重く、感動的だ。

Text: 三宅正一



RHYMESTER
12th. New Album『Open The Window』
2023年6月21日 Release


数量限定初回盤(VIZL-2124):¥4,982+税
初回盤には特殊BOX仕様、ブックレットとして、全ゲスト、関係者を招く対談集「文庫本:Open The Window」を封入
通常盤(VICL-65828):¥3,073+税

1. After 6(TBSラジオ「アフター6ジャンクション」テーマソング)
Produced by DJ JIN
2. 【新録曲】My Runway feat. Rei
Produced by Mr. Drunk, Rei
3. 【新録曲】Open The Window feat. JQ from Nulbarich
Produced by Jeremy Quartus
4. 初恋の悪魔 –Dance With The Devil– / SOIL&"PIMP"SESSIONS に RHYMESTERを添えて(日本テレビ系ドラマ『初恋の悪魔』最終章テーマ曲)
Produced by SOIL&“PIMP”SESSIONS, Mr. Drunk
5. 世界、西原商会の世界! Part 2 逆featuring CRAZY KEN BAND(株式会社西原商会社歌)
Remix Produced by Mr. Drunk
6. 2000なんちゃら宇宙の旅(Eテレアニメ「宇宙なんちゃら こてつくん」主題歌)
Produced by DJ JIN
7. 予定は未定で。
Produced by MASTA SIMON from Mighty Crown
8. マクガフィン / 岡村靖幸さらにライムスター
Produced by Okamura Yasuyuki
9. 【新録曲】なめんなよ1989 feat. hy4_4yh
Produced by DJ JIN, 宇多丸
10. Forever Young (ザキヤマ Remix) / スチャダラパーからのライムスター(TOKYO FM50周年キャンペーン・ソングより、ザキヤマ参加エデイット)
Produced by The Antipation Illicit Tsuboi
11. 待ってろ今から本気出す
Produced by Mr. Drunk

Art Direction: Kimura Yutaka (Central67)
Illustration: Gakiya Isamu

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